e-TeachingAward Good Practice集
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重要度の増す研究倫理について、一流の講師陣が1回ずつ講義を行う 早稲田大学では2007年4月に「研究活動に係る不正防止に関する規程」を定め、学術研究倫理委員会が設置された。研究者に対する研究倫理についての周知、研修、教育などの企画・実施を職務の一つとしている。同委員会では、学生向け教育として、2008年度よりオープン教育センターで「研究倫理概論」という授業を実施している。 この授業では、論文作成・発表、共同研究などの研究活動を遂行する上で、あらかじめ知っておくべき研究倫理について、研究計画のあり方から知的財産権、被験者保護などの基本的事項をはじめ、利益相反、企業倫理、さらには研究ノートとデータ管理、安全保障などに関する事項を取り扱っている。 人間科学学術院の土田友章教授が、全体のコーディネーターとして章立てなどのドラフトを作成。各回の授業は、学内外から各分野の第一人者と言われる人材を集めて、1回ずつの講義を担当してもらうオムニバス形式となっているのが特徴だ。 「この授業では、法律の専門家、生命倫理の専門家、日々実験を行っている研究者など、さまざまな分野のプロフェッショナルを集めて、幅広い角度からの知見を学ぶことを目指しています。総合大学としての早稲田のメリットを活かして各学部の教員に参加してもらうだけでなく、学外からもその分野の第一人者を選りすぐって授業を構成しています」。(深澤教授) この授業が設けられた初年度に当たる2008年度は、通常通り教場で講義を行う対面授業として実施された。より多くの学生が受講できるよう、6時限目に設置し、前の授業の終了を待って短時間のうちに機材を運び入れ、早稲田キャンパスと西早稲田(当時大久保)キャンパスを繋いで遠隔授業を行っていた。事前に準備した資料を学生に配付し、教室の後方にカメラを1台固定したまま撮影された映像を配信し、配信先の教室に参加している学生にもわかるよう、講師には大きな文字で板書してもらった。それでも、講師がいる教室に参加している学生の一部からは、後方にカメラを設置することで集中力を欠くという声が聞かれた。また、講義中に生じた通信障害のために、西早稲田キャンパスとの間での通信が中断してしまうこともあった。近年、研究活動におけるデータの改ざん、ねつ造、盗用などの不正行為が相次いで明らかになっている。こうした問題に対処し、研究に従事する多くの学生が研究倫理に関する理解を深めることを目的として設けられたのが「研究倫理概論」の授業だ。学内外から選りすぐりの講師陣を集め、各学部・大学院の学生が幅広く受講できるよう、すべての授業をフルオンデマンドで配信している。フルオンデマンドなら全キャンパスの学生が履修可能 こうした問題を解決するため、翌年度からはすべての授業をあらかじめ1回分ずつスタジオで収録し、これをフルオンデマンドとして配信し、PCルームや自宅などから視聴させる方式に変更した。その結果、前年度のようなトラブルがなくなっただけでなく、さまざまなキャンパスの幅広い学生が受講できるようになったことで、履修生が大幅に増加した。当初は大学院生のみだったのを、次年度からは学部の3年生以上を対象に広げた影響もあるが、初年度23名が翌年度(2009年度)には大学院生89名、学部生86名の合計175名、2010年度には大学院生101名、学部生297名の合計398名、直近の2012年度には合計で241名となっている。この中には早稲田キャンパス以外に、西早稲田をはじめ、所沢や北九州キャンパスの学生も含まれている。 「この授業は、専門分野に関わらず研究を行うすべての学生に履修してほしい内容を扱っています。いつでもどこでも受講できるフルオンデマンドを採用したことで、すべてのキャンパスの全学部・研究科の学生に履修の機会を提供できるようになりました」(深澤教授)。 この授業の特徴である、学内外の複数講師が参加するという点においても、フルオンデマンドにすることのメリットがある。「我々は、教えたいと思った内容について日本一と言える講師を揃えることを目指しています。講義の日時が制限されていないフルオンデマンド形式なら、講師の方々のご都合を優先して講義を行っていただくことができますので、より多くの方に参加してもらいやすくなります」(深澤教授)。 各分野のプロフェッショナルを講師陣に迎え、より多くの学生が履修できる環境にする。その目標を共に達成するための解決法のひとつとして、フルオンデマンドという方法が適していたということだ。授業に関する疑問点はメールやBBSで質問できる オンデマンドコンテンツは、50~90分程度の動画として作成され、スタジオで講師が話している映像に、資料のパワーポイントのいつでも、どこでも、各分野の第一人者によるオムニバス形式の授業で、研究倫理の修得を!10深澤良彰早稲田大学 理工学術院教授早稲田大学 研究推進部科目運営スタッフ

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