e-TeachingAward Good Practice集
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折井准教授は、現在2つの授業の一部にオンデマンド授業を組み込んでいる。当初は休講対策として始めたものだが、実際に使ってみると、教場でしかできない実践練習の時間を増加させる効果もあった。ハードルが高いと感じていたCourse N@viだったが、職員の支援を受けて導入してみた結果、有効な活用法を見出すことができているという。休講対策で始めたオンデマンド授業 教場での実習時間が増える効果も緊急時の休講対策にオンデマンド授業を用意 2003年、嘱任当初にオンデマンド授業の導入を勧められたときは、「IT方面には苦手意識がありましたし、対面で授業をするのが好きなので、オンデマンド授業なんて考えられませんでした。」という折井准教授。 それにも関わらずオンデマンド授業を取り入れるようになったきっかけは、2008年度の後期に、自身が妊娠・出産を体験したことだった。「妊娠後期に多少トラブルもあり、突然入院という緊急事態も起こりかねない状況でした。そこで、急な休講に備えてオンデマンド授業用のコンテンツを用意しておくことにしたのです。」 最初は、通常行う授業と並行してスタジオでも授業を収録しておき、いざというときにオンデマンド授業に差し替えるという使い方をした。出産後に復帰してからも、オンデマンド用の回を準備しておくことで、育児などの事情で突然授業ができなくなったときも、休講にすることなく乗り切れたという。「個人的な事情で学生に迷惑をかけるわけにはいかないので、オンデマンド授業というバックアップを用意しておけるのは、精神的にも安心できました。」理論はオンデマンドで、教場では実践練習中心に その後は、差し替えの必要が生じるケースは減ってきたが、一度使い始めてみるとそのメリットに魅力を感じ、休講対策以外でも活用するようになったという。 現在も利用している授業のひとつが、「英語音声学」だ。従来は授業時間内に資料を配付して説明していた内容を、オンデマンド授業としてCourse N@viから予習させておき、教場では発音練習などを中心に行う。「音変化についての理論的な説明など受動的な部分は、各自に自宅でじっくり取り組んでもらいます。その分、教場では実践トレーニングに時間をかけられるようになりました。膨大な資料も、各自プリントアウトして持参してもらうことで、準備や配付の手間と時間が省けます。」 この方法は、理論の説明など1回聞いただけでは分かりにくい内容を何度でも繰り返し学習できるとして、学生たちにも喜ばれているという。加えて、オンデマンド授業を取り入れることにより、教場で発音練習の時間が増えたことを歓迎する声も多いそうだ。「人数の多いクラスなので、一人ひとりを直接指導できる時間がなかなか取れず、学生たちからも不満の声がありました。まだ十分とは言えませんが、少しでも練習時間が増え、学生の意欲に応えられるようになったのは、良かった思っています。」 2011年度前期は、全授業のうち3回分でオンデマンドを取り入れた。「あまり多いと学生は視聴するコンテンツを溜めてしまいがちなので、このぐらいのペースがちょうどいいようです」。オンデマンド授業を視聴できる期間については、当初は3週間~1か月ぐらいに限定していたが、試験前にも見たいという学生が多数出てきたため、現在はすべて年度末までは見られるようにしている。 オンデマンド授業導入後は、オンデマンド授業を視聴していれば出席扱いとし、教場の授業では出席を取らないことにした。それにも関わらず、実際には教場の授業における出席率はほとんど下がらなかったという。「この授業では最後に発音テストもあるため、教場の実地練習時間が増えたことで、出席するモチベーションが上がったのかもしれません。」学生の理解を深めるため説明動画と小テストを併用 もうひとつ、オンデマンド授業を取り入れているのが「英語中級コミュニケーション」という授業だ。この授業は、スピーキング、リスニング、ライティングを総合的に扱うものだが、このうちライティングの基礎となる「アカデミックライティングの基礎」という分野でオンデマンド授業を取り入れている。以前は、4回分ぐらいの時間をかけて説明していた分を、3~4回分のオンデマンド用コンテンツとして作成し、各自で視聴させる。 オンデマンド授業用のコンテンツは、動画による説明だけでなく、1章ごとに小テストを用意し、それを解いてから次の章に進ませるような作りにした。学生たちの理解を深めるための工夫として、小テスト機能も利用してはどうかという職員からの提案を受け入れたものだ。 折井准教授が解説する動画自体は1章につき3分程度にとどめ、関連する資料をダウンロードして読んだり、小テストに取り組んだり、最後はレポートを書いたりすることで、ほぼ1回分の授業に相当する学習ができるようにしてある。16折井麻美子教育・総合科学学術院准教授

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