e-TeachingAward Good Practice集
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め方が、講義と同じようにうまくいくのかという心配はありますが、何とか工夫しながらシステム化していきたいですね」。 将来的なプランとしては、多少のスクーリングは行うとしても、ほぼすべての授業をオンデマンド化することを考えているという。「たとえば、アメリカのフェニックス大学などは、通学制はなく、フルオンデマンドで行う通信制専門の大学ですが、立派に修士号を取る人材も育っています。日本の大学でもいずれはそういう形がもっと増えていくのではないでしょうか」。 ただし、欧米の大学では、オンデマンドでビデオを流すだけで授業が成立するという認識はなく、BBSのディスカッションで相当濃密な論議をした上で、単位認定をしているそうだ。「その点、日本では、まだディスカッションをとことんやるというところまではいっていないですね」。 そもそも、欧米のような「言葉の格闘技」というべき文化がないため、自分の主張を論理的に述べて議論を戦わせるということ自体、日本人は得意ではないともいわれる。「自分の主張で相手を説得するというトレーニングが不足しているのだと思います」。 それに加えてBBSでの文字でのやりとりの場合、「深く考えすぎてしまったり、簡単に傷ついてしまったりする傾向がみられます。すぐに返答をしないなど、マナーの問題もある」というのが向後教授の印象だ。そのため、現在BBSを使う場合には、議論の場としてではなく、個別に意見を書かせ、それを互いに読んで、他人の意見を参考にするという形で使用しているという。顔写真付きBBSやチャット機能の要望は実現へ Course N@viの開発から導入に関して、「もっとも要望をたくさん出したのは私でしょう」と語る向後教授。学生に授業の感想や質問を記入させるレビューシートもそのひとつだ。向後教授が担当する講義クラスは、300人規模となるが、最初の授業では練習用として、全員にこのレビューシートを提出させ、その全部にコメントを返している。2回目以降の提出は任意としているが、2~3割の学生が記入してくるという。「今まではわからなかった学生の考えを把握できるのがいいですね。授業の内容を深く理解しないと書けないような内容を書いてくる学生もいます。まじめに考えている学生の存在を確認できるのはうれしいものです」。 Course N@viへの今後の要望としては、「画面が殺風景なので、もう少しフレンドリーな画面にならないか」という点を挙げる。たとえば、「BBSに小さな顔写真が表示されれば、どんな人が発言しているのかがわかります。文字だけでやりとりするのと比べて、それだけでもいわゆる『荒れる』といわれるような状態を防げるはずです」。 また、同時にログインしている人を一覧で確認できて、その中に自分の知っている人がいれば、呼びかけてチャットをするという機能を提案する。「同じ時間にいっしょに勉強をしている実感が持てて、モチベーションアップにつながるのではないでしょうか。チャットルーム自体、学生同士がちょっと気になることを相談し合うなど、ニーズは必ずあると思いますよ」。 向後教授らの要望に応え、BBSの顔写真表示機能は、2009年4月、チャット機能は2010年4月よりCourse N@viに追加された。グループワークもオンラインでできる仕組みを希望 さらに、グループワークを実現する機能として、「Wikiのようなシステムが実装されるとうれしいですね。これがあれば、4~5人で集まってひとつのレポートを作成するということなどができるようになります」。 今は対面で行っている小グループのワークショップも、いずれはオンラインで実施したいと、向後教授は考えている。「テレビ会議やスカイプ、iチャットなど、徐々にいろいろなツールができつつはあるものの、今はまだこれらを導入しても、運用上面倒な部分がありそうです。しかし、将来的には、対面で行うのと同じような熱い一体感を、離れた場所にいるにも関わらず実現できたらいいですね」と夢はふくらむ。 「新任の教員たちにCourse N@viを説明すると、とても反応がよいようです。教員にとっても、最初からこれを使えば、いろいろなことが本当に楽になるはず。今後、導入する教員が増えてくれば、Course N@viを巡る環境も大きく変わってくると期待しています」。成績管理の画面出席や小テスト、レポート、BBSの発言に対する点数をそれぞれ入力しておくと、あらかじめ登録した配分に応じて自動的に最終評価を計算することができる。19オンデマンド授業部門

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