e-TeachingAward Good Practice集
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うけれど実は言葉通りの意味じゃないとか、韓国人は年齢の違いによる上下関係が厳しいとか、そういうことを実感として知ることができるのは貴重な経験になります」。将来、学生たちが社会に出て英語で交渉する必要に迫られたときに役立つ、英語で議論するスキルや交渉術を身につけることが、この授業での何よりも大きな収穫だということだ。 また、ここでは英語でディスカッションをする相手がネイティブではないことにも意味があるのだと近藤助教は指摘する。「日本人が実際に英語を使う機会というのは、非ネイティブが相手であることが多いものです。今の時代、英語学習はインターナショナルなコミュニティに入るためのものであり、世界の人々とコミュニケーションを図るツールとして英語を身につけることが非常に大事なのです」。 そういった意味で、リサーチしたことを発表したり、自分の意見を言ったり、質問に答えたりということを英語で行うこのCCDLの授業は、まさにインターナショナルコミュニティで行われていることのトレーニングとなる。英語を通じて異文化を理解することで、さらに英語を学びたいという意欲も出てくると同時に、英語での交渉力や議論する力も上がってくるというわけだ。ICTが当たり前に使えることで新しい学習の可能性が広がる 日本の大学にいてこうした学習機会が提供できるのは、ICTの活用が不可欠となっていることは言うまでもない。映像付き音声チャットやTV会議システムを使えば、離れたところにいる者同士が、互いの顔を見ながらリアルタイムに対話ができることで、目の前にいるのに近いコミュニケーションが可能になる。「一般に、言語だけで伝達できる情報は全体の10~20%程度だと言われています。音声があればイントネーションによってニュアンスを感じることができるし、さらに映像が見えることで身振りや手振り、そして表情などからも相手の意図を読み取ることができます。直接向き合って話すことには敵わないけれど、メールなど文章だけでやりとりすることに比べたら、誤解が生じてもすぐ解消できるなど、意思が通じる度合いはかなり大きくなります」。 このCCDLの授業は2008年度に始まり、2012年度で5年目となっている。その間、教科書の改訂を重ねているだけでなく、学生のディスカッションにふさわしいテーマを検討したり、学生のタスクの分量を調整したりするなど、さまざまなブラッシュアップを重ねてきている。海外の相手校を含めて担当する教員が一堂に介し、指導方法の標準化やカリキュラムの改善など意見交換を行う教員会議も年に1度設けており、挙がった意見を集約しつつ、段取りや内容の見直しを行っている。「おかげで、授業としての完成度はとても高くなってきています。最近では、交流先の帯域幅や遅延のデータを測定し、どのぐらいのクオリティなら学生のディスカッションを維持できるかという研究も行われていています。こうしたデータは今後の交流相手先を選ぶのにも役立ちそうです」。 ICTの活用を前提とし、日常的に利用している近藤助教にとって、ICTは「あるのが当たり前」の存在だという。「今の時代、インターネットを使って遠くの人とコミュニケーションをとれること自体は、とりたててすごいという実感はありません。むしろ、当然と感じるほどに実用的なツールとなっていると言えるでしょう。設備は整っていてもそれを活かせていないところも多いようですが、早稲田では安心して活用できる環境がしっかりと根付いて、こうした授業が成り立っているのはすばらしいことだと思います」。27交流の様子CCDL授業部門

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