e-TeachingAward Good Practice集
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三尾教授が専門とする教育工学は、教師教育や授業研究が基本的なテーマだ。その目的は、教師が教えることの選択肢を広げ、問題を解決するための手段を提供することだという。教育学の専門家としてCourse N@viの多様な可能性に注目した三尾教授は、自身の授業においてさまざまな場面で導入し、効果を上げているという。教育学の観点からも、Course N@viの多様な可能性に注目していますレポートの提出状況を学生と共有できる 2007年度、Course N@viのスタートと同時に実施して好評だったのが、レポートの受理状況をCourse N@viで確認できるようにしたことだという。 「自分がちゃんとレポートを提出したのか、間違いなく受理されているのかを確認しないと不安に思う学生が増えています。そこで、Course N@vi上で学生自身の目で直接確認できるようにしてみました。」 Course N@viには、ファイルをアップロードするという形でレポート提出そのものをオンライン上で完結させる機能もある。しかし三尾教授の場合は、レポートは教場で直接提出させ、受理した段階で教員側がCourse N@vi上で提出済み扱いとする作業を行う。これにより、学生はどのレポートが提出済みで、どれが未提出なのかを、自分でいつでも確認できるようになる。 印刷物としてのレポート提出にこだわるのは、「受講生が100人を超えるので、全員のレポートを画面上で見るのは大変」との理由から。加えて、完成したレポートを提出前に教室で学生の間で交換して相互評価させているので、ペーパーで提出させた方が都合がいいという事情もあるそうだ。 この授業では、期末試験を受験するにはレポートをすべて提出することが必須なため、学生にとってレポートの提出記録は重要だ。「提出物が多い、あるいは提出物を重要視している授業では、このシステムは大変有益だと思います。」 30~40人程度の規模で行う授業では、「ディスカッション機能」も利用している。たとえばある資料映像を見せて、それについての意見をその場でPCから書き込ませるというものだ。 通常の議論だと、発言する学生が限定されてしまい、他の学生は傍観者となってしまいがちである。その点、PCでの書き込みは各自がマイペースで参加できるメリットがある。また、口頭だと発言しながら混乱してしまう学生も、書きながら論旨を整えることができる。直接顔を見て話し合うのに比べると議論が深まらない面はあるが、記録が残るので、後から読み返してもう一度考えてみる材料にもなる。教員の側でも、見せた教材の効果について後から考察するのに役立つという。補講での利用を意識したオンデマンド授業の試み 2009年度からは早稲田大学でも、国民の祝日にあたる休日の一部にも授業が実施されることになっている。これに伴い、補講期間の確保が困難になるのではという懸念の声もある。そこで、三尾教授は補講用にCourse N@viを使ったオンデマンド授業を導入することを考え、昨年12月に試験的に実施してみたという。 オンデマンド授業というと、カメラに向かって教員が講義をしているビデオを連想しがちだが、三尾教授は、通常授業で話す文言を文書(html文書)として作成し、これをCourse N@viにアップロードしておくという手法を採った。学生たちは、キャンパスに来て教室で授業を聴く代わりに、PCからCourse N@viにアクセスし、この文書を読む。 通常、文書を読むのに要する時間は話を聴くよりも短くなる。したがって、通常90分の授業で話す内容をそのまま文章にして読ませるだけだと、それよりも短い時間で学習が終わってしまう。そこで、途中で参考資料を読む、関連URLを表示するなどの作業を行うプロセスを挿入し、通常教室で行う対面授業と同じぐらいのボリュームで学習できるよう配慮した。 また、授業に参加したことを確認するため、この授業で解説したトピックについてコメント(レビュー)を書かせ、その提出を以て出席扱いとすることにした。 終了後学生たちにアンケートを採ったところ、学習に要した時間は60分程度との回答がもっとも多く、次いで75分、45分という回答を合わせてほぼ4分の3程度を占めた。「資料と説明は学習に足りていたか」という設問には、ほぼ肯定的な回答が多数であった。 これらの結果から、「対面授業と完全に置き換えるのは無理としても、やむを得ない場合にそれを補完する次善の策としては、オンデマンド授業は十分利用できるのでは」というのが三尾教授の感想だ。また、「学部学生で教員免許取得を目指す学生は、教育実習と介護等実習の期間は、キャンパスでの授業に出席できません。その期間の授業資料を掲載しておくことで、少しでもスムーズに実習後の授業に参加できる支援になることも期待できる」。「Course N@viにはさらにいろいろな機能がありますから、それらを複合的に使うことで、全15回のうちの2回までぐらいなら許容範囲となり得るのではと感じています。」44三尾忠男教育・総合科学学術院教授

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